従来のFAQ作成では、これまでの問い合わせ履歴やアンケートといった大量のデータの中から、「よくある質問」を手作業によってピックアップし、わかりやすい回答文をそれぞれの質問に対して作成することが必要でした。この作業には膨大な時間・労力を必要とし、担当者の負担が大きくなります。
さらに、担当者のスキル・経験によりFAQの品質にばらつきが生じる、情報が古くなり更新が追いつかなくなるなどの課題も発生しやすいといえます。
AIを活用したFAQ作成には、主に自然言語処理技術や生成AIが用いられています。これまでに蓄積してきた問い合わせログや社内マニュアルなどのデータをAIに読み込ませ、その内容を分析・学習させます。
さらに質問の傾向を自動で抽出する、似たような質問をグループ化する、マニュアル情報を元に回答文の自動生成を行うといったことを行います。また、RAG(検索拡張生成)技術の組み合わせにより、社内にある独自データベースの参照を行いつつFAQの自動生成を行う仕組みもあります。
FAQの作成にあたっては、企業内に蓄積されている多彩なデータの利用が可能です。例えば、顧客や社内からの問い合わせ履歴が挙げられます。また、社内の業務マニュアルや社内規程などの既存ドキュメントも用いることができます。
これらのデータをAIに読み込ませることによって、社内にある資産を生かしつつFAQの生成が可能となります。ただしこの時の出力精度は使用するデータの質に左右される点に注意が必要です。
AIの導入によって、膨大な問い合わせ履歴から「よくある質問」を効率よく抽出できるようになります。人間が目視で数千件のログを確認し、傾向を分析するのは骨の折れる作業ですが、AIを活用することによって短時間で大量のデータの処理が可能となります。
例えば類似の質問をまとめる、よく寄せられる質問を取り出してランキング化するといったこともできます。この作業により、質問者の多くが知りたいと考えている情報を把握でき、ニーズに応えられるFAQの構築ができるようになります。
質問文の抽出だけではなく、回答文のドラフト作成まで自動化できる点も、AIを導入するメリットです。この点から、FAQを作成する際に要する作業工数の大幅削減に繋げられます。
これまで手作業で行っていたデータの収集・文章の作成をAIに任せることにより、担当者は内容確認や微調整などに集中できます。さらに、ルールや機能が追加・変更された場合にも新たなマニュアルなどをAIに読み込ませることで、関連FAQを素早く更新可能。このように、運用やメンテナンスの負担も削減できます。
人が手作業でFAQを作成していると、特定の分野に情報が偏ったりすることがあります。しかしAIは入力されたすべてのデータを対象として客観的な分析を実施するため、人の作業では気づきにくい疑問なども拾い上げられ、質問の網羅性を高められます。さまざまな視点から質問と回答の作成が可能となることから、情報の漏れを防ぎ、さまざまな疑問に対するFAQの作成が可能となります。
従来のFAQ作成は、人が作業する以上どうしても担当者の知識や文章力に依存しがちになり、担当者が変更になるとその品質を保つことが難しくなるという「属人化」についての課題が挙げられていました。
しかしAIの導入により一定のアルゴリズムやプロンプトに基づいて文章の生成が行われますので、誰が担当しても一定水準のFAQ作成ができます。
まずは元となるデータの準備が必要です。質問メールやチャットの履歴、コールセンターでの応対履歴、社内マニュアルなどを収集します。AIの生成品質はこのようなデータの質が大きく関わってきますので、古い情報や不正確な内容が含まれないように注意することが必要です。
データが準備できたら、AIツールに読み込ませることで質問の抽出を行います。AIは大量のテキストデータの解析を実施し、頻繁に寄せられている質問などを自動で見つけ出せます。
単にキーワードの一致だけではなく、文脈や意味の類似性についても理解しグループ化することから、例えば「パスワードを忘れた」「システムへのログインができない」といったように異なる表現が用いられていても、同じ課題としてまとめられます。抽出されたデータを元にして、FAQとして掲載する項目を選択します。
質問項目が決まったら、回答文の生成を行います。AIに対しマニュアルや規程などのドキュメントを根拠として提示することにより、その内容に基づく回答の作成を行うように指示を行います。生成AIは指示された内容に合わせて回答となる文章をすぐに出力します。
また、RAG(検索拡張生成)の仕組みを持ったツールであれば、社内のデータを検索し、内容を要約して回答文を作成してくれます。
AIが生成した質問と回答をそのまま公開するのではなく、人間の目での最終的な確認を実施します。AIは優秀ではあるものの、時に文脈を誤解する、事実と異なる情報(ハルシネーション)を生成するリスクがあります。
専門用語は正しく使用されているのか、法的に問題ないかなどを確認し、必要であれば人間により文章の修正などを行います。このように、内容について確認を行った上でFAQを公開します。
FAQは一回作成してそれで終わりではなく、公開した後も継続的な改善を行っていきます。例えば、「検索はされているものの回答が存在しない内容」について確認して新しくFAQデータを追加する、「閲覧数が多いものの自己解決に至っていない回答」についてわかりやすい修正を行っていくといった対応を行います。
このような改善を繰り返していくことによってFAQの価値を高められます。
AIを活用した上で注意すべきなのは、「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。これは、AIがもっともらしい文章を作成し、事実とは異なる情報を生成してしまうことです。
誤った内容でFAQを公開すると、もし外部向けのものだった場合には企業の信用低下につながるため、AIで生成した回答の根拠について十分に確認してから公開することが大切になります。
AIが生成する回答は、読み込ませるデータや参照元のドキュメントに依存しています。読み込ませるデータや参照するドキュメントが古いまま更新されていない場合、AIはその情報を正解として回答の生成を行います。そのため、何か変更があった場合には大元のドキュメントを最新のものに書き換えを行うことが必要です。
このように、AIが参照している情報が最新のものであるかという点を管理するための体制を整えておくことも重要です。
一般的な生成AIツールに対してデータ入力を行う場合には、その内容がAIの学習データとして利用されるリスクがあります。そのため、AIに対して顧客の氏名や電話番号などの個人情報、企業の機密情報を入力することは避けるべきです。
AIを活用することでFAQの作成工程を大幅に自動化できますが、作成した内容を必ず人が確認するようにしてください。AIは人の感情や微妙なニュアンスなどを完璧に理解はできません。そのため、意図した回答から微妙なずれが生じていたり、生成された文章が冷たく感じたりすることがあります。必ず生成された回答は担当者の目を通し、わかりやすさや正確性などを確認する体制を整えておくことが必要です。
自社で保有しているドキュメントをAIにスムーズに読み込ませるために、ツールが対応しているファイル形式を確認することが大切です。自社のマニュアルや問い合わせの履歴がどのような形式で保存されているか、という点について事前に確認してファイルの変換を行わずにそのまま読み込みができるツールを選ぶことにより、導入や運用の手間を大きく減らせます。
前述の通り、AIが生成したFAQは内容が正確かどうかを人間がチェックすることが大切です。その際に、「AIがどの資料のどの部分を根拠としているのか」がわかると効率的に作業を行えます。そのため、AIが回答を生成する際に参照したマニュアルの該当ページやリンクなどを提示してくれる機能があるか確認すると良いでしょう。ハルシネーションを防ぐための確認を容易に行える体制を整えておくことも大切なポイントといえます。
AIにより良質なFAQを作成しても、ユーザーが目的の回答にたどり着けない、というのでは意味がありません。そのため、FAQの検索性・閲覧性に優れたツールを選択することも重要なポイントです。
例えば表記の揺れに対応した検索機能や、ユーザーが入力している間におすすめの質問を表示できるサジェスト機能、チャットボット形式での検索機能といったように、顧客が迷わずに自己解決まで辿り着くことをサポートする機能を備えているかを確認してください。
FAQは作って終わりではなく、運用する中で更新や分析、改善を行っていくことが大切です。そのため、ユーザーが使用する検索キーワードの傾向や回答閲覧数、解決率などを可視化できる機能が用意されているかを確認してください。例えば「検索数は多いもののFAQがないキーワード」がわかることで、よりユーザーが利用しやすいFAQ作成のヒントになります。
また、担当者がFAQの修正や追加を行いやすい仕様になっているかも確認しておきたい部分です。
AIツールを初めて使用するなど、導入に不安を抱えている企業の場合は特に、ベンダー側のサポート体制を重視すると良いでしょう。導入時のデータ整理に関するアドバイスや担当者向け説明会といったように、支援が手厚いツールを選択することがおすすめです。
また企業のデータを取り扱うため、情報セキュリティ対策の確認も欠かせません。自社のセキュリティ基準を満たしているかを契約前にしっかりと確認しておいてください。
コンタクトセンターにおいて、サポートの基盤となるFAQ整備について課題を抱えていた企業での導入事例です。
こちらの企業では、「既存のFAQシステムに左右されないFAQツール」を必要としていたことから、株式会社東芝が提供するRECAIUSナレッジエディタを導入しています。その結果、導入前の半分の作業時間でFAQの生成を実現。さらに、この経験からFAQに関連したさまざまな知見を得られたとしています。
もともと電話を使用した社内問い合わせが非常に多いことが課題であり、その内容は単純なものが多く担当者はいつも同じ回答をしていました。このような定型的な質問への対応は自動化したいと考えていました。さらに新型コロナウイルスの影響によって働き方が変化し、出社制限によって電話対応ができなくなりました。
そのため、社員は誰にどう質問したら良いか判断できない、メールで問い合わせの上回答を待つしかない、という状況になったタイミングでチャットボットの導入を進めました。このような定型的な問い合わせについては、50%減を目標として取り組んでいます。
「FAQ AI 導入支援会社」と検索して、10位までに公式サイトが表示された会社の中から、FAQ AIの導入支援を行っていると確認できた会社を紹介しています。(2026年8月12日調査時点)
ZeQ(ゼクー)はZendeskの導入・運用支援を行っている企業です。同社は2014年からZendeskを活用することによって、企業と顧客間におけるコミュニケーション体験が向上するようにサポートを行ってきました。数多くの導入実績を誇り、「Zendeskの事ならなんでも相談できる存在」としてさまざまな企業を支援しています。
さらに、導入や定着、運用・保守についてもしっかりとサポートするためのサービスも用意しています。
こちらの記事では、FAQの作成にあたってAIを活用する、という点について解説を行ってきました。従来のFAQ作成は時間と労力がかかる、属人化などが課題となっていましたが、AIの活用によりこれまで蓄積してきたデータから「よくある質問」を効率的に抽出した上で回答文の作成まで行えることから、大幅な工数作成や網羅性の向上が期待できます。ただし、ハルシネーションや機密情報の取り扱いには注意が必要であり、FAQを公開する前に人間による確認が必須となります。
現在さまざまなツールが提供されていますが、対応可能なデータ形式や回答の根拠を確認できる機能、検索性、充実したサポートやセキュリティ体制が用意されているかを確認することが大切です。
カスタマーサポートにAIを導入する企業が増える一方で、
「何をゴールにするのか」によって、選ぶべき技術やパートナーは大きく異なります。
本ページでは、サポート領域におけるAI活用の3つの視点──
問い合わせの自律実行/オペレーター支援/顧客理解と改善──に分けて、
それぞれの目的にもっとも適した国内ベンダーをご紹介します。
高度な生成AIを搭載し、定型的な質問応答から予約・注文処理までを自律的に完了させるソリューションです。コスメブランドのLushでは、AIが初期対応を担うことで一次解決率60%を実現し、毎月360時間の業務削減に成功。美容サロンのHello Sugarでも予約プロセスの自動化などにより66%の自動化率を達成しています。単なる“FAQ誘導”ではなく、顧客の課題を直接解決するAIをスピーディに立ち上げたい企業に適しています。
“チャットに答える”のではなく、ユーザーの目的を理解し、自律的に問題を完了させるAIエージェント。返金・配送確認・キャンセル処理などの実行業務を人手を介さず完了できるのが特徴。導入は数クリック・短期間で完了し、サポート業務の40〜60%を自動処理する実績も。Zendesk導入実績は500件を超え※、味の素デジタルビジネスパートナー、ベースフード、SONY Bizなど業界を問わず支援してます。
音声認識AIを駆使し、コンタクトセンターにおける電話応対から後処理(ACW)までをシームレスに効率化するソリューションです。通話内容をリアルタイムでテキスト化し、適したFAQを自動提示します。通話終了後はCRMの入力項目に合わせて内容を自動要約するため、オペレーターは確認・微修正のみで記録が完了。北國銀行などの事例ではACWを約30%削減した実績があり、現場の業務負荷軽減適してます。
「人が主役」の設計思想のもと、コールセンター全体の能力とやりがいを高める支援に特化しています。独自の高精度な音声認識技術により、新人オペレーターでも迷わず正確な回答ができるようナビゲートします。また、SV(管理者)向けには、全オペレーターの状況のリアルタイムモニタリングや、感情変化・NGワードの検知アラート機能を提供。現場の心理的安全性を保ちながら、組織全体の応対品質向上と平準化を実現する点が評価されています。
カスタマーサポートに寄せられる声(VoC)だけでなく、Webサイトでの行動履歴や過去の購買データなど、企業のあらゆるデータを一元化する顧客データプラットフォームです。蓄積されたデータとAIを活用することで、解約リスクの予測や、顧客一人ひとりのニーズに合わせた的確なアクション案をリアルタイムに提示します。サポート窓口を高度化し、全社的なLTV(顧客生涯価値)の向上を推進したい企業に適しています。
トレジャーデータは、顧客データ活用領域に特化したプラットフォームを提供する企業です。企業が保有するWeb行動データやサービス利用履歴、問い合わせ情報などを統合し、顧客理解を深めるためのデータ基盤を構築できます。こうしたデータを活用することで、カスタマーサポートにおいても顧客の状況を把握しやすくなり、担当者への振り分けや対応判断に役立てることが可能になります。サポート部門だけでなく、マーケティングや営業部門とのデータ連携にも活用されており、顧客対応の質向上やアップセルにつながる取り組みを支える基盤として導入されています。